こんにちは、志羽晴輝です。
青森県は青森港と佐井港とを結ぶ高速船『ポーラスター』に乗船してきました。
この記事では主に船内の様子をまとめております。
路線概要
この航路は青森港から下北半島を目指し、
脇野沢港・牛滝港・福浦港を経て半島北西部の佐井港へと至る路線です。
1日2往復が運航されています。
冬季はうち1往復が脇野沢止まりとなります。
青森市街から下北半島へ向かうには陸奥湾を大きく迂回する必要があり、
また道路事情もあって当航路は離島航路として設定されています。*1
しかしながら、道路の整備は進めてこられており、バスの運行もされています。
地域の足としての需要は非常に小さいようで、
新型コロナウイルスの影響もあって2020年度の乗船率は2%に留まりました。*2
同年度の赤字額は1億5千万円弱。
2008年度から行われてきた自治体からの赤字補てんが2022年度で終了するため、
それに合わせるかたちで運航を終了する予定です。*3
1971年10月に前身となる下北汽船によって路線が開設されて以来、
51年の歴史に幕を下ろそうとしています。
ポーラスター
ポーラスターは隅田川造船所にて建造され、2008年11月13日より就航しています。
全長32メートル、幅6.5メートル、総トン数は101トンです。
船体の上部構造は軽合金、下部構造は高張力鋼でできています。
単胴船です。
船首は鋭く尖ったデザインで、23ノットの高速航行に対応します。
見た目にもスピード感を演出していますね。
狭い港内での旋回性能を得るためにバウスラスターが装備されています。
船首部分に窓はありませんが、
シィラインのロゴとカモメのイラストが描かれています。
船体側面にも色とりどりのカメモが描かれています。
真っ白な船体にカラフルなカモメのイラストが鮮やかで目を引きますね。
船内
客室は船体中央を境に前方・後方と分かれます。
前方は船首寄り3列は2-2-2で、それより後方は3-2-3の配列です。
スペースがかなり広めにとられています。
前後の間隔も広めで、ゆったりと寛ぐことができます。
後方もほぼ同じ構成ですが、
最後列は車椅子対応となっており、前後間隔がさらに広く取られています。
そのため窓枠と座席が一致せず、窓枠だけの席が存在します。
座席はシートポケットのみが備え付けられているシンプルなシートです。
古さこそあるものの、いい具合にクッションが効いていて座り心地が良いです。
リクライニングはありません。
平舘海峡から津軽海峡に抜けるところは海流が複雑で、
荒天時は波が高くなりがちですからシートベルトが設置されています。
船尾最後部は左舷側にお手洗いが2つあります。
うち1つはバリアフリー対応の大型タイプです。
右舷側には自販機が設置されています。
航行時間が長めですので、飲み物を補給できるのは有り難いですね。
路線の見どころ
青森港を出港すると、陸奥湾の中央を下北半島へ向けてほぼ直行します。
左手には津軽半島、右手には夏泊半島を見ながら進みます。
脇野沢港まではおおよそ1時間で到着します。
脇野沢港から佐井港の間は下北半島の海岸線に沿って航行していきます。
なかでも約2キロに渡って奇石が連なる県内有数の名勝地『仏ヶ浦』の傍を通り、
ゆっくり眺めることができるように速度を落として通過します。
見どころは仏ヶ浦だけではありません。
牛滝港を出てすぐ見えてくる青白い岩肌。
仏ヶ浦を通り過ぎてすぐに見えてくる柱状節理の発達した崖。
焼山の赤褐色に色がついた荒々しい岩肌。
陸側からは決して見ることができない、
変化に富んだ自然の美しさを目のあたりにすることでしょう。
ゆっくり景色を楽しみたい方は、
脇野沢や佐井などから出ている観光船に乗り換えるのもいいですね。
道路が閉鎖される冬季にも運航がされますから、
真冬の雪に閉ざされた景観を見に行くのもまた趣がありそうです。
このようにとても景色が良い航路ではありますが、
先に述べた通り乗船率が非常に低く赤字となっていることから2022年度で運航が終了してしまいます。
非常にもったいなく感じてしまいますが、
実際私が乗船したときは乗客数が5人程度と平日という点を考慮しても非常に少ないです。
さらに燃料費も高騰するなかで高速船を維持するというのは昨今の情勢化では非常に難しいことだと思います。
また本船は車両を積載することができないことも収益が上がらない要因となっているように思えます。
脇野沢港からは津軽半島の半ばにある蟹田港へカーフェリーが出ていますが、
同じ日に乗ったところ観光バスを載せて団体客で賑わっていました。
(とはいえ蟹田・脇野沢航路は冬季運休があるなど、収益が上がらず苦労をされているようです)
かつて青函連絡船は発着していた岸壁から出ていたり、趣味的にも面白い路線です。
乗りにいかれる方はどうぞお早めに。