
こんにちは。
バーチャル旅人、志羽ハルキです。
沖縄本島に次ぐ面積を持つ離島、それが佐渡です。
新潟県の西部に位置するこの島は3つ※の航路で内地と結ばれています。
メインとなるのは新潟市内の新潟港と佐渡市東部の両津港を結ぶ路線ですが、
今回は佐渡市西部の町「小木」と、新潟県第3の主要都市「直江津」を結ぶ航路にを利用してきました。
その船は、高速双胴船フェリーあかねです。
乗船当時、この船の動向に自治体が騒然となっていました。
今回は船内のレポートのほか、その事情も併せてご紹介いたします。
佐渡汽船、直江津・小木航路とは
この航路は国道350号線の海上区間として設定されています。
佐渡市内唯一の国道として両津から佐和田を経て小木へ抜けるメインルートとなっており、その両端は新潟市中央区と上越市直江津を結ぶ海上区間となっています。
本土から離島へ渡って別ルートで本土に戻るという大変めずらしい国道です。
高速フェリーあかね

オーストラリアの造船会社「インキャット」にて製造された、高速双胴船です。
波を切り裂けるように細い胴体を左右につなぎ、高速航行を可能にした先進的な船体をしています。
インキャットはこの船体を「ウェーブピアーサー」と呼んでいます。
両津航路で実績のある「ジェットフォイル」を充てる案もあったそうですが、
車両の航走や収益性などの観点から高速フェリーを新しく作ることとしたそうです。
建造費はおよそ59億円。
上越市と佐渡市が建造費用の一部を補助しておりその金額は10億円あまり。
北陸新幹線金沢開業に合わせた、上越地域の期待を背負った船です。
搭乗橋を渡って客室へ

船内に入ってみましょう。
客室は船体の一番高い位置に設置され、平屋構造となっています。
この下には車両甲板が設けられており、自動車やトラックなどが搬入されます。
ゆったり革製、1等ときクラス

船内前方は、1等席「ときクラス」が配置されています。
幅の広いゆったりとした革製のリクライニングシートが並びます。

区画を回り込むように配置された窓と、客室位置の高さによって眺望は抜群です!
一面に海原が広がるその視界は開放的で、船旅をワクワクさせてくれることでしょう。
甲板上に見えるのは、錨を巻き上げるための機器です。
この船の錨は鼻先から落とすようになっている、フェリーでは珍しいタイプです。

ときクラス区画の後方にはラウンジスペースとなっており、
大人数で利用した際の談笑などにも使うことができます。
左舷側は1人掛けのイスが並びます。

右舷側はベンチシートとなっています。
間隔広々、スタンダードな2等席

ときクラスの後方からは2等席。
リクライニング機構を持つ座席は背面テーブルつき。

前後の間隔が広く取られており、足元はとても広々としています。

外に出られるスペースは、船尾のみです。時化や夜間は閉鎖されます。
航行中は飛沫を上げて勢いよく波が後に伸びていく様を見るのも楽しいですが、
ウォータージェット推進器が動く様子を眺めているのも結構楽しいです。
舵の代わりに小刻みに動いて針路を取る動きに高性能っぷりを感じることが出来ますよ。
売店のほか最近流行りのペットルーム完備

船内中央には売店があります。
佐渡のお土産品も取り揃えていますので、
フェリーとの接続時間が短くてお土産を買う時間がないときでも安心です。

また、お子様連れでも安心して遊ばせておくことができるキッズルーム。

バリアフリーに対応した多目的トイレと、
ペットを連れての移動に対応した「ペットルーム」も備え付けられています。
フェリーでペット対応の設備が設けられるのは最近のスタンダートになりつつあり、
長距離フェリーでは商船三井フェリーのさんふらわあ、
地域間フェリーでは津軽海峡フェリーなどでも導入が進んでいますね。

そして、船内最後方の右舷側には「じゅうたんコーナー」が設置されています。
独特な揺れ方をする双胴船。これが船酔いを誘発させやすいそうです。
酔ったときに横になりたいという要望に応えて、元々座席があったところを撤去して作られたんだそうです。
自由に利用することは出来ず、スタッフに声をかけてから使用するルールです。
そのため普段は入り口にベルトが渡されていて入ることが出来ません。
時化!波3メートル・うねりを伴う
乗船前から不吉なアナウンスです。
「本日時化のため、到着が遅れましたことをお詫びいたします」
チケットを発券しにいくと窓口では、
「1等のある前側が揺れやすく、本日は時化模様ですので特に揺れると思われます。
せっかく1等をお求めのところ恐れ入りますが、2等に変更もできます……」
とのこと。
とはいえ1等のチケットを持っていないと船内全部を見て回れないので、
そのまま発券してもらいました。
船内に入ると、
「時化ていると前側が特に揺れますから、後方の空いている席に移っていただいて構いませんので……」と、スタッフの方が案内に見えられました。
そして出港前のアナウンス、
「今日は時化模様で大きく揺れることが予想されます。
航行中はできるだけお席におすわりのままお過ごしください」
不安を胸に、出港を告げるアナウンスが続いて船はゆっくりと港を離れます。
小木港は長い防波堤が続く、まるで水路のような形をしています。
そこをゆっくりと進んでいくのですが……すでに揺れますねぇ。
双胴船は波に対して斜めに入ると、右の船体と左の船体とで動揺するタイミングがずれるので不快な感じになるんですよね。
船体が大きく、船室が高い位置にあるためか、周期が長い縦揺れがきます。
重心が後ろにあるようで、舳先に近いほど振れ幅が大きくなるという感じです。
出港してから数分でもうコレですので沖に出るとどうなるか……。
強烈な浮遊感を伴う揺れ
状況は防波堤を抜け沖に出た途端に一変します。縦揺れがとても大きくなりました。
波を超えるときに内蔵がふわっと浮くような、スーッとする浮遊感を伴います。
飛行機の乱気流で上下に強く揺れているときと同じ感覚です。
しかも、波に対して斜めに航行しているので左右に滑る感じになります。
右ナナメに持ち上がって、左ナナメに落ちるというのが続きます。
撮影も兼ねているので根性で座っていましたが、
落下する感覚が特に苦手な私は恐怖感が大きくなり目眩もしてきました。
これは吐く!と思って大きく揺れる船内を後方へ移動します。

後方に移ると少しマシになります。
左右に揺れますから、中央寄りのシートに陣取りひたすらに耐える時間となりました。
横を見ると、窓一面の青空が見えたかと思えば窓一面の青い海。
見ているだけで酔を悪化させそうなので必死に前の壁だけを見つめます。
スマホなんて見ていられません。
さすがに立って歩ける状況ではなく、スタッフに横になってよいか聞きに行くことも出来ず……。
しばらく様子を見ていると、
カーペット敷きのスペースにお年寄りの方が連れてこられて横にさせられ、
少し前方の方ではスタッフの方に抱えられて椅子から降ろされている人、
今まで何度か時化のフェリー乗っていますが、こんな光景は初めてです。
必死に眠りにつこうと頑張って意識が遠くなり、
気がつくと小木港到着の少し前までとなりました。
入港間際になって後部デッキに出られるようになったので、
外の空気を吸いに出たら少し気分はマシになりましたが……。
初めての乗船でトラウマを植え付けられるような航海となってしまいました……。
ナッチャンと同じ轍を踏む
いつかまたリベンジマッチを挑みに行きたいところですが、
残念ながら、この船は売却が決定しています。
元々年間8億円の赤字を計上していた直江津・小木航路。
テコ入れとして導入されたあかねは、一時期は好調でしたがその後の旅客減少は止まらず。
高い維持費もあり、赤字は膨れ上がり年間10億円にもなってしまいました。
就航からわずか5年。
自治体は怒りの声を上げるなどし、会長が辞任の意向を表明するなどありましたが、結局は収益改善のためついに売却となりました。
ところであかねに採用されたインキャット製の高速双胴船は、
国内では青森・函館航路で運行されていた「ナッチャンRera」「ナッチャンWorld」が初めて採用されておりました。
3時間40分かかかる同航路に最速1時間45分で結ぶという、いわば鳴り物入りで導入された2隻です。
運行を開始してみると、船から出る波が漁業に影響を与えることが発覚。
同船の運行に伴う在来船の本数削減により航路全体の利便性が低下。
そして原油高による燃料費の高騰による収益性の低下がトドメに。
Reraは1年強、Worldに至っては半年で運行終了し、運行会社はフェリー事業から撤退となる事態となりました。
同様の事態とならないよう、慎重な計画や調査が練られた上での導入となったあかねですが……。
残念ながら、同じ轍を踏む事となってしまったのです。
この記事の掲載当時は売却先や時期は決定していませんが、
売却後は一時的にジェットフォイルを充て、できるだけ早い時期にカーフェリーを就航させる予定となっているようです。
毎年冬季はこの航路が運休に入りますので、同航路で運行されるのは本当に僅か。
通常であれば冬季は新潟・両津航路に充てられるハズですが……、果たしてどうなることか。今後の動向に目が離せません。
また乗る機会があったらいいのですが……。